柔道漫画「帯をギュッとね!」#37
河合克敏作・小学館
週刊少年サンデーにて1989年〜1995年連載
2020年7月25日は、東京五輪・柔道競技初日でした。日本第1号の金メダルは誰になるのか!みたいな話題で盛り上がること間違いなしの日になるはずでした。
しかし現在、スポーツの取り巻く環境は非常に厳しく、世界中から人が集まる五輪開催への道はまだまだ険しいと言わざるをえません。
スポーツの中でも、とりわけ柔道は厳しい部類に分けられています。新年度になり、新しく柔道を始めた人って、全国でいったいどのくらいいるのでしょう。公立中学校などでは新入部員ゼロも珍しくないようです。
仕事柄、たくさんの10代の人と話す機会があるのですが、漫画をきっかけにその競技を始めたという人も結構多いです。漫画か、その競技を何かの映像媒体で観たか、両親が経験者だったか、おおよそこの3つに集約されています。
大会がない今、映像というのはなかなか期待できない。五輪開催日であった今だからこそ、柔道漫画の紹介をすべきだと思いました。
中でも柔道未経験者が読みやすいのはなんと言っても帯をギュッとね、通称「帯ギュ」です。昇段審査の時にたまたま出会った5人(マネージャー含め7人)がたまたま同じ高校に入り、柔道部を創部するところからスタートします。それぞれに個性のあるキャラクターで、おそらく誰か1人くらいは「この人の柔道スタイルが好き」というお気に入りが見つかるはずです。新興チームだからこその上級生との上下関係や軋轢のない、全体的にとても爽やかな構成となっています。
作者の父が柔道5段を持っているとのことで、技術の描写や柔道界の内情などは結構現実的だったりします。警察関係者が柔道を指導していたり、高校生が警察の柔道部に出稽古に行く場面などは「こういう人いたなぁ」とか「おれもやったなぁ」なんて思う人も多いのではないでしょうか。ちなみに浜名湖高校の柔道部員ほど意識や能力がなかった僕は警察の柔道部に練習に行っても粘ったり技が決まりかけたりすることは全くありませんでした。試合で少しずつ結果が出始め、「強くなってるのかなぁ…?」と思ったくらいです。
作中には実際に活躍していた選手がモデルであると考えられるキャラクターや学校も存在していたりして、それが誰なのかを探すのも楽しいです。後半から女子柔道の話が出てくるのですが、高校生の中でも突出した選手が一気に世界まで駆け上がる様子は現代の素根輝選手や阿部詩選手を連想させますね。
全てを読んでいるわけではないので、他にも魅力ある作品はあるのでしょうが、僕が読んだ作品の中では初心者ならば「帯ギュ」一択です。ちなみに僕は少なくとも50回以上は読み返しています。大人が読んでも面白いはずなので、興味がある方は是非ご一読ください。