偉人伝 ロバート・アイガー①#44
参考文献:ロバート・アイガー著「ディズニーCEOが実践する10の原則」〜The Ride of a Lifetime〜
今年の夏、いろいろな制限つきではありますが、東京ディズニーリゾートが営業を再開しました。これに大喜びした人は多かったと思います。
言わずと知れた世界最強のエンターテインメント企業。ウォルト・ディズニー・カンパニー。老若男女、人種を超えてたくさんの熱狂的なファンを獲得しています。
その世界最強企業、ディズニーの最高責任者であるロバート・アイガーはこう言いました。
ディズニーCEOは最も最高のアトラクションである
6代目のCEOであるロバート・アイガー。彼は決して生まれながらに成功が保証されているような一族でも、裕福な家庭に生まれたわけではありませんでした。
元アメリカ海軍の家庭に生まれたアイガー。父は軍人を辞めた後にいろいろな職に就くものの長続きせず、やがて躁鬱状態になってしまいます。幼少の頃のアイガーは父の帰宅時のドアを開ける音でその日の機嫌がわかるほどになっていました。
そんな荒れた生活なので家計は厳しく、アイガーは中学2年生の頃から大学卒業まで、アルバイトをいくつも掛け持ちするような生活を送りました。
父親はいつも「おれのようにはなるな。しっかり勉強して立派な職業に就くんだ」と話していました。その影響があったのか、アイガーは読書にのめりこみ、学校の成績も非常に優秀だったようです。
ふとしたことがきっかけでネットワークテレビ局のABCに入社。当時のテレビ局はとても資金力があり、テレビマンは花形の職業でした。とはいえ配属部署はスタジオ管理部の雑用としての採用だったので、とても過酷な日々がアイガーを待ち受けていました。
そんな雑用に追われる日々、アイガーは上司の横領を知り、告発しようとするが逆に攻撃され、解雇を宣告されてしまいます。なんとも横暴な話ですが、当時はそういうことがまかり通る時代でした。
職を失ったアイガー。しかしなんとかこの会社に残りたいアイガーは各部署を必死にあたります。するとたった1つ、スポーツ部だけが空きがあったのです。当然ですがアイガーはそれに飛びつきました。
アイガーはここで、1人の人物と出会います。
その名はルーンといい、テレビの帝王と呼ばれたヒットメーカーでした。完璧を求めるぶんスタッフへの当たりは厳しく、最終的に残った部下はアイガーただ1人になってしまうほどでした。ルーンはスポーツの中にドラマを求めるという、スポーツ番組といえば中継オンリーだった当時においては画期的な番組を作りました。アスリートがいかにしてその舞台まで駆け上がったかをドキュメンタリー形式で撮影するというのは現代では当たり前の手法となっていますね。それの先駆者の元で、アイガーは学びました。
しかしアイガーはこうも考えていました。「完璧を求めることと優しさは同居できるはずだ」気性も激しく、もう少しで完成するというところで全てをひっくり返して1からの編集を命令するルーンからは去っていくスタッフが多かった。批判も多い。しかしテレビ作りの腕は確か。完璧を追求するのは良いことだが、もっと思いやりを持ちながら、みんなと協力してやっていくことは可能だ。アイガーはそう考えていました。
そしてしばらくして、ABCがキャピタルシティーズという小さな会社に買収されるという事件が起こります。そこでスポーツ部とニュース部の部長を兼任していたルーンはニュース部に専念することになり、スポーツ部の部長にはアイガーが抜擢されることになります。ルーンの下で働いていたのですが、この瞬間ルーンと同格の地位に出世を果たしたのです。時ほどなくして、オリンピックが開催されました。これにスポーツとニュースの共同体制で番組を作っていくことになります。ルーンは相変わらずの傍若無人ぶりをみせますが、アイガーがスタッフをうまくまとめて大成功をおさめ、その様子を見ていたキャピタルシティーズの経営者、トムとダンからABCエンターテインメントの社長になるように要請されます。
全く未知の領域への挑戦権を得たアイガー。少しずつ、しかし着実に彼の人生は動き始めました。