偉人伝 ジャック・マー②#58
多くの周囲の反対を押し切って設立したインターネット上での企業紹介サイト「イエローページ」ですが、設立直後はなかなか顧客も増えず、苦しい時期が続きました。
しかし1年後、大きな転機をジャックは迎えることになります。
中国が国を挙げてインターネットの導入を決定。中国版のIT革命が起こり、先駆者であったイエローページは爆発的に業績を伸ばすことに成功しました。
ようやく日の目を見たジャック。このまま順風満帆と行くかと思われましたが、そうはいきませんでした。
政府機関の仕事も請け負うようになったジャックですが、そのまま政府、さらに大手企業にイエローページは買収されてしまい、決定権まで奪われてしまいます。
もうこれまでか…。と普通なら思うところです。しかしジャックは諦めません。
大きな企業相手のものは、大手資本や国家に奪われてしまう。しかし小企業や、個人相手の事業ならば、我々にも勝ち目はあるはずだ。当時SNSの流行を予見していたジャックは、中国版Amazonともいうべき淘宝網(タオバオ)を設立。これが中国全土に広まり、大成功を収めるのです。その勢いは凄まじく、本家のAmazonが中国に進出してきた時に、わずか数%のシェアも獲得することができずに撤退するほどでした。淘宝網設立の数年前に立ち上げたアリババネットも中国でのシェアの大部分を獲得し、まさしくGAFAに対抗する存在にまで成長しました。
その後中国Yahooを買収。ソフトバンク取締役等を歴任。アジアナンバーワンの富豪の座も獲得しました。かつての冷戦のような雰囲気を、現在のアメリカと中国に感じますが、中国側の代表とでも言うべき存在になりました。
不屈の闘志でここまで成長を遂げたジャック。しかし55歳の誕生日にアリババ会長職を引退。表舞台から姿を消してしまうのです。これについては政府間のやり取り、米中戦争の矢面に立つことへの精神的疲労、はたまた大スキャンダルの隠蔽など、様々なことが噂されていますが、本当のところはわからないままです。
たった1つだけ、「私は一介の教師に戻りたい」という発言を残しているジャック。このまま姿を消したままにはならないのではないか、僕はなんとなくそう感じています。
中国杭州に生まれた普通の少年が、英語に興味を持ち、それが縁で行ったアメリカでインターネットと出会った。日本以上の学歴社会である中国で、決して優等生ではなかったジャックのサクセスストーリーは、諦めなければ、努力すれば、そして出会うことの重要性を認識すれば夢は叶う。そう教えてくれているような気がしてなりません。