感染症の歴史から学ぶ#9
参考文献
national geographic 2020.04.08版
アルベール・カミュ著「ペスト」
加藤茂孝著「人類と感染症の歴史」
このたび世界を混乱に陥れたウイルス性新型肺炎ですが、感染症が流行したのはこれが初めてではないようです。むしろ何度も甚大な被害を被り、今なお苦しめられている人も少なくありません。
クマネズミから伝染したウイルスをノミが吸い込み、それを人間にうつしたことで大流行したペストは「黒死病」と呼ばれ、14世紀には欧州の人口の3分の1の命を奪ったとも言われる流行病となりました。このとき、ユダヤ人が病原菌を撒き散らしたというデマが流れ、各地でユダヤ人虐殺事件が起こりました。誤報により無関係な人間を傷つけるという人間心理は今も昔も変わっていないことを、今回の新型肺炎の騒動は教えてくれます。しかしながら労働人口が激減したことにより農奴解放が促進され、現在の資本主義の礎になるというプラスの作用ももたらしました。2017年にマダガスカルでペストの流行が確認され、年間約2,000人が死亡しているとも言われます。未だ根絶しているとは言い難い状況です。
WHOが根絶を宣言しているのは天然痘のみで、コレラもインドでは現在でも死亡原因の上位に挙げられていますし、スペイン風邪と言われ、当時の世界人口の4分の1が感染したと言われるインフルエンザは年を経るに従ってその形を変え、現在でも毎年世界中の人を悩ませています。
現在日本では自粛解除の動きが促進され、ようやく少しずつではありますが通常の生活を取り戻そうとしています。
しかし、完全に元どおりにはならないはずです。倒産している企業も少なからず出ていたり、学校の9月入学が検討されるなど生活様式の変化は大小問わず起こるでしょう。そして、2回目の流行は必ず起こるはずです。それまでに有効な治療手段が見つかるのかどうかは不透明で、再び世界が混乱する要素が大きいことは間違いありません。
こういう時こそ冷静になり、我々にできることを模索することが大切ではないか。今回の流行の際に起きたことや自分のとった行動を教訓にして、まずは自分の精神と身体を健康に保つ。そのうえで感染拡大を防ぐために自分のとるべき行動を探す。
元はといえば世界に存在していたウイルスを、人類が生活圏を拡げたがために人の生活にまで入り込ませてしまったのが原因です。
必要以上に怖がらず、かと言って軽く見ない。
以前にも書きましたが、ウイルスと共存する生き方を模索することが大切ではないかと僕は思います。